生成AIを毎日触っていると「それっぽいのに事実じゃない」答えに必ず出会います。これがハルシネーション。LLMは確率的に次の単語を並べるモデルなので、完全にゼロにはできません。ただ、設計と運用で“起きにくく”“気づきやすく”“影響を小さく”はできます。僕自身、仕事でRAGやツール実行を組み合わせてだいぶ改善してきました。
ハルシネーションとは何か
LLMがもっともらしいけれど事実と異なる内容を自信満々に生成してしまう現象です。
- 事実誤認(存在しない論文・API・バージョン)
- 作り話の引用・出典
- 推論の飛躍(前提の取り違え、条件の見落とし)
重要なのは、モデルが「嘘をつく意思」を持っているわけではなく、学習と推論の仕組み上「それが最も尤もらしい並び」だと判断した結果だという点です。
なぜ起こるのか(メカニズム)
トークン予測の性質
LLMは「文脈から次に来そうなトークンの確率分布」を出す確率モデルです。学習分布にない固有名詞や新情報、曖昧な文脈では、確率の尾にある“見かけ上もっともらしい”語を拾い、筋の通ったフィクションを合成します。
学習データのギャップと偏り
- 時間ギャップ: 学習後に登場した最新情報は知らない
- 被覆ギャップ: 長尾の専門領域やローカルな知識は薄い
- バイアス: Web由来の偏りや言語間の非対称が推論に滲む
プロンプト曖昧性と制約不足
要件が曖昧、前提が足りない、禁止事項が弱い、といった条件だと、モデルは隙間を補うために創作に走ります。長文文脈では要件の一貫性を保つのも難しくなります。
防げないけれど、減らすことはできる
対策
プロンプト設計
- 役割/前提/禁止事項/出力形式を明示
- 「分からないときは分からないと言う」を義務付け
- ステップ分解(要件抽出→計画→回答)で飛躍を防ぐ
プロダクト/UX
- 回答に出典リンクと信頼度を添える
- 重要タスクは二重実行+差分比較(自己一貫性チェック)
- 承認フロー(人手レビュー)とログで品質を担保
僕のまとめと姿勢
ハルシネーションは確率モデルであるLLMの本質的な性質です。防ぎ切るのではなく、プロセスと設計で“扱いこなす”のが現実解だと思っています。ぼくは、根拠の提示と検証可能性、そしてユーザーの再判断を前提にしたUIを組み合わせることで、安心して業務導入できる水準まで持っていけると考えています。